「最高の光は、一瞬で過ぎ去ってしまう…」
風景写真や動画を撮影する方なら、誰もがこの言葉に頷くのではないでしょうか。刻一刻と変わる光を捉えるため、私たちはフィルターを駆使します。しかし、従来のねじ込み式フィルターは着脱に手間取り、寒い日には手がかじかんでうまく回せないことも。角型フィルターは高機能ですが、設営が少し大掛かりになりがちです。
「もっと素早く、もっと直感的にフィルターを交換できたら…」
そんな全てのフォトグラファー、ビデオグラファーの願いを叶えるべく登場したのが、今回ご紹介するNiSi(ニシ)の「JetMag Pro(ジェットマグ プロ)」です。
この記事では、プロの風景写真家であり、日々さまざまな機材をテストしている私が、NiSiの革新的なマグネット式フィルターシステム「JetMag Pro」を徹底的にレビューします。
- JetMag Proって何がすごいの?
- 実際の使い方は?難しくない?
- 画質は本当に大丈夫?作例が見たい!
- 従来のフィルターシステムと比べてどうなの?
- メリットだけじゃなく、デメリットも知りたい
こんな疑問に全てお答えし、あなたがJetMag Proを導入すべきかどうか、この記事を読めば判断できるようになります!
JetMag Proの可変NDについては下記の動画で解説しています
NiSi JetMag Proとは? – 新時代の超高速フィルターシステム
NiSi JetMag Proは、強力なマグネット(磁石)を利用して、レンズフィルターを瞬時に着脱できる画期的なシステムです。その名の通り、「ジェット」のような速さでフィルター交換が可能になります。
このシステムの核心は、レンズ側に装着する「マグネティックアダプターリング」と、磁力でくっつく「JetMag Proフィルター」にあります。
一度アダプターリングをレンズにねじ込んでしまえば、あとはフィルターを「カチッ」と乗せるだけ。従来のフィルターのように、イライラしながらネジ山を探して回す必要はもうありません。
開発の背景 – なぜ今マグネットフィルターなのか
近年、カメラの高画素化とレンズの高性能化に伴い、フィルターにも高い光学性能が求められるようになりました。同時に、SNSや動画プラットフォームの隆盛により、一瞬のシャッターチャンスやスムーズな撮影フローが、これまで以上に重要視されています。
NiSiは、プロフェッショナル向けの高品質な角型フィルターシステム(V7など)で世界的に高い評価を得てきました。そのNiSiが、角型フィルターの「画質と拡張性」と、円形フィルターの「手軽さ」の”いいとこ取り”を目指して開発したのが、このマグネット式フィルターシステムなのです。
特にJetMag Proは、従来モデルからさらに進化を遂げ、より強力な磁力と洗練されたデザインで、プロの過酷な現場にも耐えうる信頼性を獲得しました。

僕はFreewellのマグネット式NDフィルターも持っているけどNiSiの方が完成度が高いね!
ここが凄い!JetMag Proがもたらす5つの革新的メリット
なぜ多くのフォトグラファーがJetMag Proに熱狂するのか?その理由は、従来のフィルターの常識を覆す、圧倒的なメリットにあります。
メリット1:【1秒で交換完了】圧倒的な着脱スピードが撮影を変える
JetMag Pro最大のメリットは、何と言ってもその交換スピードです。
例えば、目の前で素晴らしい朝焼けが広がっているとします。
- まずはフィルター無しで撮影
- PLフィルターで空の青と雲のコントラストを強調
- NDフィルターを重ねて、雲の流れを表現する長時間露光に挑戦
従来のねじ込み式フィルターでは、この一連の流れで数分かかってしまい、最高の光を逃してしまう可能性がありました。
しかしJetMag Proなら、各フィルターの交換は文字通り1秒。アダプターリングにPLフィルターを乗せ、その上からNDフィルターを重ねるだけ。このスピード感は、一度体験すると元には戻れません。シャッターチャンスに集中できる時間が増え、結果的に作品のクオリティを大きく向上させてくれるのです。
メリット2:薄枠設計で広角レンズのケラレを徹底抑制
「フィルターを重ね付けすると、写真の四隅が暗くなる『ケラレ』が心配…」
特に広角レンズを使う風景写真家にとって、これは死活問題です。JetMag Proのフィルターフレームは非常に薄く設計されており、フィルターを重ね付けしてもケラレが発生しにくいのが特徴です。
例えば、16mmや17mmといった超広角レンズに、CPLフィルターとNDフィルターを重ねても、ケラレの心配はほとんどありません。これにより、ダイナミックな構図でのフィルターワークの自由度が格段に向上します。

可変NDではケラレが発生してしまいます。。
メリット3:妥協なき光学性能 – 高品質ガラスとナノコーティング
「マグネットは便利そうだけど、肝心の画質はどうなの?」
ご安心ください。NiSiはフィルター専業メーカーとしての誇りを持ち、JetMag Proにも一切の妥協はありません。
- 高品質な光学ガラス: 色かぶり(特定の色が写真全体に乗ってしまう現象)を極限まで抑え、見たままのクリアな色彩を捉えます。
- 両面ナノコーティング: 逆光時などに発生しやすいフレアやゴーストを強力に抑制します。
- 防水・防汚コーティング: 水滴や汚れが付着しにくく、たとえ付いても簡単に拭き取れます。滝のしぶきがかかる場所や、雨天時の撮影でもストレスなく使用できます。
この高い光学性能があるからこそ、プロは安心してJetMag Proを現場に持ち込めるのです。
メリット4:スマートな連携 – CPLフィルターと他フィルターの関係性
JetMag Proシステムでは、多くの場合「マグネティックCPLフィルター」がシステムの土台となります。アダプターリングにCPLフィルターを装着し、その上からNDフィルターやGNDフィルターを重ねていくのが基本スタイルです。
このCPLフィルターは、側面のギアを回すことで、上に他のフィルターが乗っていてもスムーズに効果を調整できます。これは非常によく考えられた設計で、水面の反射や空の色を微調整しながら、NDフィルターで露出時間をコントロールするといった高度な撮影が、驚くほど簡単に行えます。
メリット5:豊富なラインナップで表現は無限大
JetMag Proは、ただ便利なだけではありません。表現の幅を広げるためのフィルターラインナップが非常に豊富な点も魅力です。
- CPL(偏光)フィルター: 青空を濃くし、水面や葉の反射を除去する必需品。
- ND(減光)フィルター: レンズに入る光の量を減らし、日中でもスローシャッターを可能にします。ND8, ND64, ND1000など濃度のバリエーションも豊富。
- GND(ハーフND)フィルター: 画面の半分だけが暗くなっており、空の明るさと地上の暗さの輝度差を調整します。
- ナチュラルナイトフィルター: 夜景撮影時の光害をカットし、星空や街の灯りをクリアに写します。
- ブラックミストフィルター: 光を柔らかく拡散させ、シネマティックで情緒的な雰囲気を演出します。動画撮影にも最適。
これだけの種類が揃っていれば、風景、ポートレート、スナップ、動画まで、あらゆるジャンルでフィルターワークを存分に楽しむことができるでしょう。
【写真で解説】JetMag Proのリアルな使い方と装着手順
百聞は一見に如かず。実際の装着手順を写真付きで見ていきましょう。ここでは、SONY α7IVとTAMRON 28-75mm F/2.8 G2(フィルター径67mm)の組み合わせを例にします。
ステップ1:アダプターリングをレンズに装着
まず、主役となる「マグネティックアダプターリング」を、レンズ先端のフィルターネジに優しくねじ込みます。これは従来通り、くるくると回して装着します。一度装着すれば、撮影中は基本的に付けっぱなしでOKです。
ステップ2:ベースとなるCPLフィルターを装着
次に、CPLフィルターをアダプターリングに「カチッ」と乗せます。強力な磁力で吸い付くように装着され、簡単には外れません。これで撮影の基本準備は完了です。
ステップ3:NDフィルターなどを磁力で重ねる
CPLフィルターの上から、使いたいNDフィルターを重ねます。これも「カチッ」と一瞬。驚くほど簡単です。フィルターの向きを気にする必要もありません。
取り外しも一瞬!
フィルターの縁を軽く持ち上げるだけで、簡単に取り外せます。従来のねじ込み式のように、固く締まりすぎて外れない、といったトラブルとは無縁です。
従来システムとの徹底比較 – あなたに最適なのはどれ?
JetMag Proの魅力は伝わったかと思いますが、他のフィルターシステムと比較してどうなのでしょうか?それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の撮影スタイルに合ったものを選びましょう。
NiSi JetMag Pro | 従来のねじ込み式 | 角型フィルターシステム | |
---|---|---|---|
交換速度 | ◎(最速) | △(時間がかかる) | 〇(比較的速い) |
携帯性 | ◎(コンパクト) | 〇(フィルターのみなら小型) | △(ホルダーが嵩張る) |
ケラレ耐性 | 〇(薄枠で優秀) | △(重ねるとケラレやすい) | ◎(ホルダー設計で有利) |
GND調整 | △(回転のみ) | ×(不可) | ◎(上下左右に微調整可能) |
価格 | 〇(中程度) | ◎(安価) | △(高価) |
導入の手軽さ | ◎(アダプターとフィルターだけ) | ◎(フィルター単体で使える) | △(ホルダーの組み立てが必要) |
ねじ込み式円形フィルターとの比較
手軽さと価格ではねじ込み式に軍配が上がりますが、撮影現場でのスピードとストレスの無さはJetMag Proの圧勝です。光の変化が激しい風景撮影や、複数のフィルターを頻繁に交換する動画撮影では、JetMag Proの優位性は揺るぎません。
角型フィルターシステム(NiSi V7など)との比較
厳密な構図作り、特にハーフGNDフィルターの境界線を地平線や山稜に正確に合わせたい場合は、上下左右にフィルターを動かせる角型システムが依然として最強です。 一方で、JetMag Proは圧倒的な機動力が魅力。「角型フィルターを持ち出すほどではないけど、しっかりフィルターワークはしたい」という旅行や登山のシーンで、その真価を発揮します。手軽さと高画質を両立したいなら、JetMag Proは最高の選択肢となるでしょう。
購入前に知っておきたい注意点・デメリット
どんなに素晴らしい製品にも、いくつか注意点は存在します。正直なレビューとして、デメリットもしっかりお伝えします。
注意点1:磁力は十分か?脱落のリスクは?
「磁石って、何かの拍子に落ちたりしない?」という心配は当然です。 結論から言うと、JetMag Proの磁力は非常に強力で、通常の使用でフィルターが脱落することはまず考えられません。フィルターを重ねて振っても、まず外れることはありません。 ただし、木の枝に強く引っ掛けたり、岩にぶつけたりといった強い衝撃が加わった場合は、外れる可能性はゼロではありません。これはどのフィルターシステムでも同じことが言えるでしょう。移動時には付属のフィルターケースに収納するのが賢明です。
注意点2:初期投資とコストパフォーマンス
JetMag Proは、アダプターリングと複数のフィルターを揃えるとなると、ある程度の初期投資が必要です。安価なねじ込み式フィルターと比較すると、高価に感じるかもしれません。
しかし、これは「時間を買う」「シャッターチャンスを逃さないための投資」と考えるべきです。JetMag Proがもたらす撮影体験の向上と、それによって得られる作品のクオリティを考えれば、そのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
注意点3:汎用性と互換性
JetMag ProはNiSi独自のシステムのため、当然ながら他社のフィルターとの互換性はありません。一度このシステムを導入すると、フィルターはNiSiで揃えていくことになります。とはいえ、NiSiの品質と豊富なラインナップを考えれば、これは大きなデメリットにはならないでしょう。
【結論】NiSi JetMag Proはこんな人におすすめ!
これまでの内容を踏まえ、JetMag Proが特にどんな人におすすめできるかをまとめます。
- 一瞬の光を逃したくない風景写真家
- 旅行や登山など、機材の軽量・コンパクト化を重視する人
- スムーズな撮影が求められる動画クリエイター
- フィルターワークに挑戦したいが、難しい操作は苦手な初心者
- 従来のフィルター交換にストレスを感じている全ての人
もしあなたがこのいずれかに当てはまるなら、JetMag Proはあなたの撮影を、よりクリエイティブで、より楽しいものへと変えてくれるはずです。
まとめ – フィルターワークは新次元へ。JetMag Proで撮影体験をアップグレードしよう
NiSi JetMag Proは、単なる便利なアクセサリーではありません。それは、**私たちの撮影スタイルそのものを変革し、写真・映像表現の可能性を広げてくれる「発明」**です。
圧倒的なスピード、妥協のない画質、そして撮影に集中できるストレスフリーな環境。これらが組み合わさることで、私たちはこれまで以上に純粋に「撮ること」を楽しめるようになります。
フィルター交換の手間から解放され、目の前の美しい光景と向き合う時間が増える。これは、お金には代えがたい価値です。
もしあなたが今のフィルターシステムに少しでも不満を感じているなら、ぜひNiSi JetMag Proの世界に飛び込んでみてください。そこには、今まで知らなかった快適でクリエイティブなフィルターワーク体験が待っています。あなたの写真・映像ライフが、より一層輝き出すことをお約束します。