ZRとは何か? ハリウッドの技術を搭載した「ニコン初のシネマカメラ」
ついにNikon(ニコン)初のシネマカメラ「Nikon Z R」のレビューをお届けできる日が来ました!
Z Rは、ニコンと、ハリウッドの対策映画にも使用されているシネマカメラメーカーであるRED社の技術が融合した「Zシネマシリーズ」の第一弾です。主に、これから動画を本気で始めたいエントリー層や、ハイアマチュア、セミプロといった層を意識して開発された機種となっています。
まずは、その衝撃的なスペックと価格を見ていきましょう。
| スペック概要 | 詳細 |
|---|---|
| センサー | 24MP フルサイズセンサー |
| ダイナミックレンジ | 最大15+ストップ |
| ISO | デュアルネイティブ ISO (800と6400) |
| 動画記録 | 6K/60P、4K/120P |
| 内部RAW収録 | REDのカラーサイエンスによるR3D形式のRAWに対応 |
| 音声収録 | 32ビットフロートに対応 |
| 重量 | 約630g (バッテリー、メモリーカード込み) |
| メモリーカード | CFexpress Type BとMicro SDが1枚ずつ |
30万円を切る「衝撃の価格破壊」
この驚くべきスペックを支えるのは、さらに驚きの価格です。
Nikon Z Rは、ボディ単体で税込299,200円と、30万円を切る価格設定になっています。
「30万円は高い」と感じる方もいるかもしれませんが、本家REDのシネマカメラは数百万の値段がします。また、すでに市場にあるフルサイズセンサー搭載のミラーレスベースのシネマカメラの多くは、Z Rの2倍近い価格であることを考えると、このZ Rの価格「価格破壊すぎる」と言わざるを得ません。ニコンダイレクトでは、定価13万円強の万能な24-70 F4ズームレンズがセットになった、374,000円のお得なレンズキットも用意されています。
ZRの特に注目すべき3つの特徴
Z Rを使って特に感じた、このカメラの優位性を確立している3つの特徴を深掘りします。
特徴1:映画の土台を作る「REDのカラーサイエンス」
Z R最大の魅力は、ハリウッド映画の根幹を支えるRED社のカラーサイエンス(色味のレシピ)によって映像を記録できる点にあります。
REDのカラーサイエンスの設計思想は、「映画的な色を作るための土台」を提供することにあります。
12ビットのRAW形式であるR3NEフォーマットで記録することで、このREDのカラーサイエンスが適用されます。
- グレーディング耐性の高さ: R3Dで記録された映像は、非常に広い色域を持っており、映画的な色味を目指して調整を加えたとしても、色破綻が極めて起こりづらいという特徴があります。
- フィルムライクな階調: RAWをそのままRec.709で出力したとしても、色味やハイライトの滑らかさが、すでにフィルムライクな質感を持っています。
- 撮影の保険: R3D形式で採用されている階調モード「3G10」は、他のN-LogやProRes RAW、H.265で使えるN-Logと比較してハイライトの耐性が強い傾向にあります。天気が良すぎて撮影が難しいような環境でも、R3Dで撮影しておくと安心感が増します。
特徴2:圧倒的な使いやすさを生む「4インチモニター」
動画撮影機としてのZ Rの使い勝手の良さを象徴するのが、背面を覆い尽くすほどの巨大な4インチバリアングルモニターです。
多くのZシリーズや他のミラーレスカメラが備える3インチ程度のモニターと比べると、見やすさには歴然の差があり、「たった1インチ」の違いとは思えないほどです。
- 取り回しの良さ: 外部モニターは持ち運び時にバラしたり、ケーブルやバッテリーを別で管理したりする手間がありますが、内蔵の4インチモニターであれば、そうした取り回しの悪さから解放されます。
- 構図に集中できる: モニターが大きいため、カメラの設定情報を映像の外側に大半を配置でき、構図取りをする際に邪魔にならないのも大きな利点です。
この大きなモニターのおかげで、Z RではZシリーズと比較して物理ボタンの数が少なくなっていますが、タッチ操作で設定変更が非常にやりやすいため、操作性も十分にカバーできています。
特徴3:音声収録の失敗をなくす「32ビットフロート対応」
動画では映像と同じくらい音声が重要になりますが、Z Rは32ビットフロートの録音に対応している点が非常に大きいです。
32ビットフロートは非常に広いダイナミックレンジで音声を収録できるため、音割れ(クリッピングノイズ)の心配がほぼなくなります。
- 予期せぬ大声に対応: たとえ音量を調整していたとしても、急な笑い声や大声でクリッピングノイズが発生することがありますが、32ビットフロートで記録しておけば、編集時に音量を下げるだけでノイズが解消され、飛んでしまったと思われていた音もきちんと回復します。
- ソロクリエイターの強い味方: ライティング、撮影、音声すべてを一人でこなすソロクリエイターにとって、撮影時に「音量に気を配る」という作業を一つ減らせることは、相当大きなメリットとなります。
さらに、上部についている内蔵マイクの音質が非常に良く、カメラの後ろ側で喋るVlogや自撮りなど、マイクから距離がない場合は外部マイクが不要だと感じるほどのクオリティです。Vlogが撮りやすいシネマカメラは珍しいと言えます。
注意点:RAWのデータサイズとPCスペック
Z Rは非常に魅力的なカメラですが、RAW(R3D)撮影を前提とする場合は、いくつかの注意が必要です。
注意1:動画RAWは「写真RAW」とは別物
動画のRAWデータは、写真のRAWとはデータサイズが大きく異なります。
例えば、512GBのメモリーカードを使用した場合、H.265(5.4K/60P)では約200分記録できますが、R3Dの最高画質(6K/60P)では約18分で容量がパンパンになってしまいます。R3Dのファイルサイズは、H.265と比べて10倍以上にもなるのです。
注意2:ハイエンドな編集環境が必要
RAWは自由度が高い反面、ノイズ処理などは後工程で自前で行う想定で設計されています。そのため、ポストプロダクションにはハイエンドクラスのパソコンのスペックが要求されます。
動画のRAWを写真のRAWのように気軽に扱えるものだと思って手を出してしまうと、そもそも扱うことすらできない事態になりかねません。このカメラ以外に、RAWを扱える環境を整えるための相応の投資が必要になることは注意が必要です。
また、シネマカメラでありながら、外部モニターには存在するフォルスカラーやアナモルフィックレンズのデスクイーズといった機能が現状では存在していない点も、今後のアップデートに期待したいポイントです。
ZRをより楽しく使うためにおすすめレンズ5選を紹介
NIKKOR Z 40mm f/2 – 日常を切り取る、最高の「相棒」
【レンズカテゴリ】: コンパクト標準単焦点
もしあなたが「カメラを毎日持ち歩きたい」と考えているなら、このレンズがファーストチョイスです。
焦点距離40mmは、標準とされる50mmより少し広く、35mmより少し狭い、絶妙な画角。人間の自然な視野に近いと言われ、スナップショット、風景、テーブルフォト、人物まで、「見たまま」を素直に切り取るのに最適です。
f/2という明るさも魅力。フルサイズセンサーと組み合わせれば、薄暗いカフェや夜のストリートでも、ノイズの少ないクリアな写真が撮れます。何より、この性能とデザインで価格が手頃なのが驚きです。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S – 旅と日常を1本でカバーする「S-Line」万能ズーム
【レンズカテゴリ】: 高性能標準ズーム
「レンズ交換の面倒さからは解放されたい。でも画質に妥協はしたくない」という贅(ぜい)沢な悩みに応えるのが、このS-Lineズームです。
一般的な標準ズーム(24-70mm)を大きく超える、広角24mmから中望遠120mmまでの広範な焦点距離を、f/4通しの明るさでカバーします。
目の前の広大な風景(24mm)から、遠くの被写体をグッと引き寄せた(120mm)撮影、そして美しいボケ味のポートレートまで、これ1本で完結します。まさに「旅レンズ」の決定版です。
S-Lineの名に恥じないその描写力は、Z fのフルサイズセンサーの解像力を完璧に受け止め、ズームレンズであることを忘れさせるほどシャープ。Z fの手ブレ補正と合わせれば、f/4の明るさでも暗所撮影は問題ありません。
Z fのレトロな外観に最新鋭の高性能ズームというギャップもまた、プロフェッショナルな機材としての魅力を引き立てます。
✅ このレンズがおすすめな人:
- 旅行やイベントで、レンズ交換なしに様々なシーンを撮影したい人
- 「便利なズーム」でありながら、S-Lineの最高画質を体験したい人
- 動画撮影(Vlogなど)を1本のレンズでこなしたい人
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S – Zマウントの「基準」を知るS-Line標準単焦点
【レンズカテゴリ】: 高性能標準単焦点
「単焦点レンズの本当のすごさ」を知りたければ、このレンズを避けて通ることはできません。
50mmという画角は「標準レンズ」のど真ん中。Zマウントの設計思想(大口径・ショートフランジバック)の恩恵を最も受けた1本と言われ、開放f/1.8から信じられないほどシャープです。
ボケは柔らかく、とろけるよう。ピント面は恐ろしいほどに解像し、被写体の質感を余すところなく写し取ります。
先に紹介した40mm f/2が「日常と携帯性」のレンズなら、こちらは「作品撮り」のためのレンズ。じっくりとピントを合わせ、シャッターを切る。その一連の「撮影体験」の質を、極限まで高めてくれるレンズです。
✅ このレンズがおすすめな人:
- Zマウントが誇るS-Lineの「本気の画質」を体験したい人
- ポートレート、静物、風景など、1つの画角でじっくりと作品を撮りたい人
- 「f/1.8」の明るさと大きなボケを必要とする人
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S – 情景を描写する広角スナップの王道
【レンズカテゴリ】: 高性能広角単焦点
35mmという画角は、写真史において「スナップショットの王道」と呼ばれてきました。
50mmよりも広く、被写体だけでなく「その場の空気感」や「情景」をも一緒に写し込むことができます。カフェで向かいに座る人を、テーブルの上のコーヒーカップごと写したり、旅先の街角で、建物と人々が織りなすドラマを切り取ったりするのに最適です。
このZ 35mm f/1.8 Sは、S-Lineの名にふさわしく、画面の隅々までシャープな描写力を誇ります。広角レンズで出やすい歪み(ディストーション)も完璧に補正されており、f/1.8の明るさが、室内や夜のストリートスナップで威力を発揮します。
✅ このレンズがおすすめな人:
- ストリートスナップやドキュメンタリーフォトに挑戦したい人
- 「背景もしっかり写し込んだ」ポートレート(環境ポートレート)を撮りたい人
- 50mmでは少し窮屈に感じる人
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S – 被写体を際立たせる究極のポートレートレンズ
【レンズカテゴリ】: 高性能ポートレート単焦点
「ポートレート(人物撮影)を本格的にやりたい」なら、このレンズが答えです。
85mmという焦点距離は、被写体と適度な距離感を保ちながら、背景を美しくぼかし、人物を歪みなく(パースペクティブを自然に)捉えることができるため、「ポートレートレンズの王様」と呼ばれています。
このZ 85mm f/1.8 Sは、その期待を裏切りません。f/1.8の開放から得られるボケは、主役である人物を背景からふわりと浮かび上がらせ、圧倒的な立体感を演出します。ピント面のシャープネスはまつ毛の一本一本まで描き分け、ボケはどこまでも滑らか。
ZRには、高精度な「瞳AF」が搭載されており、このレンズと組み合わせることで、モデルが動いていても、開放f/1.8で完璧に目にピントが合った、息をのむようなポートレートが手軽に撮れてしまいます。
✅ このレンズがおすすめな人:にhには
- 家族や友人を、息をのむほど美しく撮影したい人
- 「ボケ味」を写真表現の主軸にしたい人
- スタジオ撮影や屋外での本格的なポートレート撮影を行う人
4. まとめ:Nikon Z Rは誰が手にすべきか?
このNikon Z Rは「買い」なのでしょうか?
写真がメイン、あるいは写真と動画が半々というハイブリッドシューターの方は、高性能な動画撮影が可能なZシリーズを選んだ方が無難です。
しかし、以下の条件に当てはまる動画に熱量の高いユーザーにとっては、Z Rは自信を持っておすすめできる最高の選択肢となります。
- R RAWで撮影し、バリバリとグレーディングをしたい映像作家を志す人。
- 動画撮影が仕事となり、オペレーションの効率化や、将来的に本家REDのワークフローのスキルを身につけたいと考えている人。
- 毎日動画を撮ってコンテンツを作っており、使い勝手に徹底的にこだわりたい人。
これまで、動画専用のシネマカメラは価格が高く、ハードルが高いものでしたが、このZ Rが30万円を切る価格で登場したことで、その敷居は間違いなく一気に下がりました。
このビッグウェーブに乗り、映像制作の世界観を構築する自由度と、撮影の失敗を防ぐ保険を手に入れませんか。
Nikon Z Rは、高性能なシネマカメラを手の届く価格で提供することで、映像制作の可能性を大きく広げてくれました。
この記事では、その体験をさらに豊かにする5本のレンズを紹介しました。
- NIKKOR Z 40mm f/2 (SE): デザインと携帯性を極める「日常の相棒」
- NIKKOR Z 24-120mm f/4 S: 旅から日常まで、画質に妥協しない「万能の1本」
- NIKKOR Z 50mm f/1.8 S: Zマウントの真価を知る「S-Lineの基準点」
- NIKKOR Z 35mm f/1.8 S: 情景を切り取る「スナップの王道」
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S: 被写体を浮かび上がらせる「究極のポートレートレンズ」
あなたの撮影スタイルに合うレンズは見つかったでしょう
もし、あなたがこのカメラの性能を最大限に活かし、思い描く映像世界を実現したいなら、Z Rはそのための強力なツールとなるでしょう。この機会に、ぜひ公式ホームページで詳細をチェックしてみてください。


