2025年5月28日、ソニーは映像制作用カメララインナップ「Cinema Line」に、待望の新モデル「FX2(ILME-FX2B)」を発表しました。FX3の成功を受け、そのコンセプトを継承しつつ、多くのクリエイターが待ち望んだ電子ビューファインダー(EVF)と、αシリーズで高い評価を得ているAIプロセッシングユニット**を搭載。さらに、α7 IVと同等の有効約3300万画素フルサイズセンサーを採用し、静止画撮影能力も強化されたハイブリッドモデルとして、大きな注目を集めています。
発売予定日は2025年8月1日、希望小売価格は416,900円(税込)。FX3よりも手頃な価格設定でありながら、プロフェッショナルな映像制作に対応する多くの機能を備えたFX2は、インディペンデントフィルムメーカーからビデオグラファー、コンテンツクリエイターまで、幅広い層に新たな選択肢を提示します。
この記事では、発表されたばかりのSony FX2について、その革新的な特徴、期待されるメリット、そして導入前に考慮すべきデメリットを、約7000字にわたって徹底的に掘り下げていきます。FX2は、映像制作の世界にどのような変革をもたらすのでしょうか。

多くの人が期待していた新しいFXシリーズですね!

気になる点もしっかりと解説していきます!
Sony FX2とは? – 主な特徴とスペック
FX2は、ソニーのCinema Lineにおける、FX3とFX6の間に位置づけられる可能性のあるモデルです。しかし、その中身は単なる中間モデルではなく、αシリーズの先進技術とCinema Lineの映像思想が融合した、新たなコンセプトを持つカメラと言えるでしょう。まずは、その主な特徴とスペックを見ていきましょう。
機能比較
FX2 | FX3 Ver 6.00 | FX30 Ver 5.00 | ||
イメージセンサー サイズ | 35mm フルサイズ | 35mm フルサイズ | APS-C/super35mm | |
イメージセンサー タイプ/ピクセル | 裏面照射型 33M | 裏面照射型 12M | 裏面照射型 26M | |
画像処理エンジン | BIONZ XR+AIプロセッシングユニット | BIONZ XR | BIONZ XR | |
動画性能 | 4K 最大記録フレームレート | FF:29.97fps S35:59.94p | FF:119.88p | S35:119.88p |
ISO感度 範囲 | 100~102400(拡張) | 80~409600(拡張) | 100-32000 | |
ベースISO(Cine EI) | 800/4000 | 800/12800 | 800/2500 | |
ラティチュード | 15+ストップ | 15+ストップ | 14+ストップ | |
AF | 被写体認識 | 人物、動物、鳥、動物/ 鳥、昆虫、車、電車、飛行機、オート/トラッキング | 人物、動物、鳥/トラッキング | 人物、動物、鳥/トラッキング |
フォーカスマップ | 〇 | 非搭載 | 〇 | |
手ブレ補正 | ボディ内手ブレ補正 | 動画:ダイナミックアクティブ/アクティブ/標準 静止画:中心5段/外周5段(CIPA2024) | 動画:アクティブ/標準 静止画 5.5段(CIPA) | 動画:アクティブ/標準 静止画 5.5段(CIPA) |
操作性 拡張性 信頼性 | ファインダー | 368万ドットOLED 0.7倍 アングル可変 | 非搭載 | 非搭載 |
拡張ネジ穴/三脚穴 | 1/4-20 UNC×3、M 3×1/三脚穴×2 | 1/4-20 UNC×4/三脚穴×1 | 1/4-20 UNC×4/三脚穴×1 | |
動画RAW出力 | 16bit RAW(S35) HDMI | 16bit RAW HDMI | 16bit RAW(S35未満) HDMI | |
メディア | CFexpress Type-A/SD×1 + SD×1 | CFexpress Type-A/SD×2 | CFexpress Type-A/SD×2 | |
静止画性能 | シャッター方式 | メカニカル / 電子 | メカニカル / 電子 | 電子 |
連写速度 | 最大 約10コマ/秒 | 最大 約10コマ/秒 | 1枚撮影のみ | |
フラッシュシンクロ速度 | 1/160 | 1/250 | フラッシュ非対応 | |
サイズ・重量 (電池・メモリーカード含む) | 129.7×77.8×103.7*mm/679g *グリップからファインダーまで | 129.7×77.8×84.5mm/714g | 129.7×77.8×84.5mm/646g |
センサー:α7 IV譲りの3300万画素フルサイズセンサー
FX2の心臓部には、ミラーレス一眼カメラ「α7 IV」や「α7C II」で実績のある、有効約3300万画素のフルサイズ裏面照射型CMOS Exmor Rセンサーが搭載されています。これは、FX3(約1210万画素)から大幅に画素数が向上した点であり、FX2の大きな特徴の一つです。
- 高解像度: 4K映像はもちろん、クロップ時の画質劣化を抑えたり、高精細な静止画を撮影したりすることが可能です。
- S-Log3 / S-Cinetone: Cinema Lineの標準であるS-Log3撮影時には15+ストップという広いダイナミックレンジを実現。ソニー独自のルック「S-Cinetone」も搭載し、ポストプロダクションなしでもシネマティックな色合いを得られます。
- デュアルベースISO: 低照度環境下でのノイズを抑えるため、ISO 800とISO 4000の2つの基準感度を持つデュアルベースISOを採用。様々な照明条件下でクリーンな映像を記録できます。
EVF:待望のチルト式電子ビューファインダー
FX3で多くのユーザーから要望が挙がっていた電子ビューファインダー(EVF)が、FX2にはついに搭載されました。しかも、単なる搭載ではなく、上下に90度可動するチルト式となっています。
- 高精細: 約369万ドットのOLEDを採用し、クリアな視認性を確保。
- チルト機構: ローアングル撮影時や、ジンバル搭載時など、様々な撮影スタイルに合わせてファインダーの角度を調整でき、無理のない姿勢で撮影に集中できます。
- 屋外での視認性: 明るい屋外での撮影において、液晶モニターが見えにくい状況でも、EVFを使えば確実にフレーミングやピント確認が行えます。
AIプロセッシングユニット:次世代のAFと撮影アシスト
α7R Vやα9 IIIに搭載され、その精度で世界を驚かせたAIプロセッシングユニットが、Cinema Lineとして初めてFX2に搭載されました。これにより、オートフォーカス性能と撮影アシスト機能が飛躍的に向上しています。
- リアルタイム認識AF: 人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機といった多様な被写体を、骨格情報や姿勢を高精度で認識し、追従し続けます。ピント合わせをカメラに任せ、フレーミングや演出に集中できます。
- オートフレーミング: AIが被写体を認識し、自動的に最適な構図になるようクロップする機能。ワンマンオペレーションでのインタビュー撮影などで威力を発揮します。
- AIベースの手ブレ補正: AIが手ブレ量を高精度に検出し、より効果的な補正を行います(後述)。
動画性能:4K60pと多彩な記録フォーマット
FX2は、プロの現場で求められる動画性能を備えています。
- 4K60p記録: 最大で4K解像度、60フレーム/秒での記録が可能です。ただし、4K60p撮影時はAPS-Cサイズ(Super 35mm)へのクロップとなります。フルサイズでの4K60p記録には対応していません。Full HDでは最大120fpsのハイフレームレート撮影も可能です。
- 多彩な記録フォーマット: 高画質なXAVC S-I (All-Intra) 4:2:2 10bit記録や、圧縮効率の高いXAVC HS (H.265)に対応。
- 16bit RAW HDMI出力: 外部レコーダーを使用することで、16bitの高品質なRAWデータを出力でき、ポストプロダクションでのカラーグレーディングの自由度を高めます。
- LUT対応: 撮影時にリアルタイムでLUT(Look Up Table)を適用でき、仕上がりのイメージを確認しながら撮影を進められます。
冷却システム:長時間撮影への信頼性
Cinema Lineの重要な要素である信頼性も、FX2はしっかりと受け継いでいます。FX3と同様に内蔵冷却ファンと放熱に配慮した構造を採用。これにより、4K60pのような高負荷な撮影でも、熱停止のリスクを大幅に低減し、最大13時間(特定の条件下)という長時間の連続記録を実現しています。
手ブレ補正:ダイナミックアクティブモード搭載
5軸ボディ内手ブレ補正に加え、FX2には新たに「ダイナミックアクティブモード」が搭載されました。
- アクティブモード: 電子手ブレ補正を併用し、歩き撮りなどで効果を発揮します。
- ダイナミックアクティブモード: AIプロセッシングユニットを活用し、アクティブモードよりもさらに約30%強力な手ブレ補正を実現。ジンバルなしでも、より安定した映像を得ることが可能です。ただし、クロップ率はアクティブモードよりも大きくなります。
操作性:VENICE譲りのUIと高い拡張性
プロの現場でのスムーズなオペレーションをサポートする機能も充実しています。
- BIG6 UI: ソニーのハイエンドシネマカメラ「VENICE」シリーズと同様のUI「BIG6」を採用。絞り、ISO、シャッタースピードなど、主要な6つの設定項目がホーム画面に大きく表示され、タッチ操作で素早く変更できます。
- タリーランプ: ボディ前面(上面)と背面にタリーランプを搭載し、撮影中であることが一目でわかります。
- カスタムボタン: 各所に配置されたカスタムボタンにより、好みの機能を割り当てて操作性を最適化できます。
- 豊富なネジ穴: ボディ各所に1/4インチネジ穴が多数配置されており、リグやアクセサリーを直接装着できます。
- XLRハンドルユニット対応: FX3と同様に、別売りのXLRハンドルユニットに対応。高品質な音声入力が可能です。
- フルサイズHDMI: 信頼性の高いフルサイズHDMI端子を搭載しています。
静止画性能:3300万画素での高画質撮影
FX2は、Cinema Lineでありながら、α7 IV譲りの優れた静止画撮影能力も備えています。有効約3300万画素でのRAW、JPEG、HEIF形式での記録が可能。AF性能や手ブレ補正も静止画撮影に活かされ、動画撮影の合間のスチル撮影や、ロケハン時の記録、作品の宣伝用写真など、様々な用途に対応できます。
ボディ:小型軽量と堅牢性
FX3と同等の小型・軽量ボディ(バッテリー・カード込みで約679g)を実現しつつ、EVFを搭載。マグネシウム合金製のボディは堅牢性も高く、防塵防滴にも配慮した設計となっています。
Sony FX2のメリット – なぜ選ばれるのか
FX2は、そのユニークな特徴により、多くの映像制作者にとって魅力的な選択肢となります。ここでは、FX2を選ぶことのメリットを詳しく見ていきましょう。
圧倒的な撮影自由度をもたらす「チルト式EVF」
FX2最大のメリットの一つは、間違いなくチルト式EVFの搭載でしょう。これは、FX3ユーザーが最も渇望していた機能の一つであり、撮影スタイルに大きな変革をもたらします。
- 晴天下の視認性確保: 強い日差しの下では、液晶モニターの視認性が著しく低下します。EVFがあれば、外部光を遮断して映像に集中でき、正確な露出やピント、フレーミングが可能になります。高価でかさばる外部モニターやフードが不要になるケースも増えるでしょう。
- 撮影への集中力向上: 接眼することで、周囲の視覚情報が遮断され、被写体と構図に深く没入できます。これは、特にドキュメンタリーや映画など、感情を捉えることが重要な撮影において大きなアドバンテージとなります。
- 多様なアングルへの対応力: チルト機構により、ウエストレベルでの撮影や、低い位置からのアングルでも無理なくファインダーを覗くことができます。特に、ジンバルやリグにカメラを搭載した場合、液晶モニターが見にくい状況でもEVFが活躍します。
- 手持ち撮影の安定化: EVFを覗くことで、カメラを顔に密着させ、体を支点として利用できます。これにより、手持ち撮影時の安定性が向上し、手ブレを抑制する効果も期待できます。
ワンマンオペレーションを革新する「AIプロセッシングユニット」
小規模クルーやワンマンオペレーションが増加する現代の映像制作において、FX2のAIプロセッシングユニットは強力な味方となります。
- ”任せられる”オートフォーカス: FX2のリアルタイム認識AFは、もはや「補助」ではありません。複雑な動きをする被写体や、複数の人物がいるシーンでも、狙った対象を驚くほど正確に捉え続けます。これにより、撮影者はピント操作から解放され、カメラワークや演出、被写体とのコミュニケーションに集中できます。
- 被写体認識の多様性: 人物だけでなく、動物や乗り物など、多様な被写体を認識できるため、ドキュメンタリー、スポーツ、ネイチャー、PVなど、幅広いジャンルの撮影でAFの恩恵を受けられます。
- オートフレーミングによる効率化: インタビューや製品レビューなど、被写体がフレーム内を移動する可能性があるシーンで、オートフレーミングは非常に便利です。カメラが自動で構図を調整してくれるため、撮影後の編集作業を軽減できます。
- より自然な手ブレ補正: AIを活用したダイナミックアクティブモードは、従来の電子手ブレ補正よりも強力かつ自然な補正効果をもたらし、ジンバルなしでの撮影の可能性を広げます。
被写体 | FX2 | FX3 | FX30 |
人物 | 瞳/顔/頭/胴体(姿勢推定技術) | 瞳/顔 | 瞳/顔 |
その他 | オート、動物、鳥、昆虫、車/列車、飛行機 | 動物 | 動物、鳥 |
「Cinema Line」の血統 – 信頼の画質とルック
FX2は、ソニーが培ってきたCinema Lineの映像思想を色濃く受け継いでいます。
- S-Cinetoneによる即戦力画質: ポストプロダクションの時間を短縮したい場合や、手軽にシネマティックなルックを得たい場合に、S-Cinetoneは非常に有効です。人の肌を美しく、自然に描写することに定評があります。
- S-Log3による広大なグレーディング耐性: 15+ストップの広いダイナミックレンジを持つS-Log3で撮影すれば、ハイライトの白飛びやシャドウの黒潰れを抑え、ポストプロダクションで自由自在な色調整が可能です。
- 上位機種との親和性: FX6やFX9、VENICEといった上位機種とカラーサイエンスが統一されているため、FX2をサブカメラとして使用した場合でも、色合わせが容易です。
「α」の力 – 高画素とハイブリッド性能
FX2は、Cinema Lineでありながら、α7 IV譲りの高画素センサーを搭載することで、静止画と動画の境界を越えるハイブリッド性能を獲得しました。
- 高品質な静止画: 3300万画素という解像度は、プロフェッショナルな静止画撮影にも十分対応できます。映像作品のポスターやウェブサイト用の写真、SNSでのプロモーション素材などを、同じカメラで高品質に撮影できるのは大きなメリットです。
- APS-Cクロップの活用: 4K60p撮影時はAPS-Cクロップになりますが、これをメリットとして捉えることもできます。実質的に焦点距離が1.5倍になるため、望遠効果を得たい場合に有効です。また、APS-C用のレンズも使用可能になります。
- ショットマーク機能: 撮影中の動画から、LUTを適用した状態でフレームを切り出し、静止画として保存できる機能も便利です。
安心して現場に臨める「長時間撮影」と「信頼性」
プロの現場では、機材の信頼性が何よりも重要です。FX2は、その点でも期待に応えます。
- 熱問題からの解放: 内蔵冷却ファンにより、長時間の4K撮影でも安心してカメラを回し続けることができます。ウェディングやイベント、長時間のインタビューなど、撮り直しがきかないシーンでこの信頼性は大きな武器となります。
- 堅牢なボディと拡張性: マグネシウム合金製のボディは、過酷な撮影環境にも耐えうる堅牢性を備えています。豊富なネジ穴やXLRハンドル対応により、様々な撮影スタイルや機材構成に柔軟に対応できます。
手の届きやすい「コストパフォーマンス」
FX2の価格(416,900円)は、FX3(発表時約58万円)よりも大幅に抑えられています。EVFを搭載し、AIプロセッシングユニットという最新技術を取り入れながらこの価格を実現したことは、大きなメリットです。Cinema Lineへのエントリーモデルとして、あるいは既存ユーザーのサブ機として、導入のハードルを下げています。

それでも十分高いですが、、
Sony FX2のデメリット – 考慮すべき点
多くのメリットを持つFX2ですが、万能ではありません。導入を検討する上で、いくつかのデメリットや注意すべき点も存在します。
「4K60p撮影時のAPS-Cクロップ」という制約
FX2の最も大きなデメリットとして指摘されているのが、4K60p撮影時にフルサイズではなくAPS-Cサイズにクロップされる点です。これは、ベースとなっているα7 IVのセンサーと画像処理エンジンの仕様に起因するものと考えられます。
- 画角の変化: 4K60pで撮影する場合、レンズの画角が狭くなります(焦点距離が1.5倍になる)。広角レンズを使用していても、思ったような広さを得られない可能性があります。特に、狭い室内での撮影や、広大な風景を捉えたい場合には注意が必要です。
- 被写界深度の変化: クロップされることで、フルサイズ時よりも被写界深度が深くなります。フルサイズ特有の大きなボケを活かしたい場合には、4K30p以下で撮影するか、より明るいレンズを使用するなどの工夫が必要になります。
- 高感度性能への影響(可能性): センサーの使用領域が狭まることで、フルサイズ時と比較して高感度性能が若干低下する可能性も考えられます。
4K60pでのフルサイズ撮影を必須と考えるユーザーにとっては、FX3やFX6が依然として有力な選択肢となるでしょう。

自分も4K120pで撮影ことがあるのでスローモーションの部分は残念です
「ローリングシャッター歪み」への懸念
α7 IVのセンサーは、読み出し速度があまり速くないため、ローリングシャッター歪み(パンニング時などに被写体が斜めに歪む現象)が発生しやすいという指摘があります。FX2も同じセンサーを搭載しているため、同様の懸念があります。
- 動きの速い被写体: スポーツやアクションシーンなど、カメラを素早く振ったり、被写体が高速で移動したりする撮影では、歪みが目立つ可能性があります。
- 対策: 歪みを抑えるためには、できるだけゆっくりパンニングする、あるいはシャッタースピードを調整するなどの工夫が必要です。ローリングシャッター歪みに非常に敏感な用途では、より読み出し速度の速いセンサーを搭載したカメラ(FX3やα1、α9 IIIなど)を検討する必要があるかもしれません。
「内部RAW収録非対応」と「上位機種との差別化」
FX2はHDMI経由での16bit RAW出力には対応していますが、メモリーカードへの内部RAW収録には対応していません。これは、FX6やFX9といった上位機種との明確な差別化点と言えます。
- 外部レコーダーの必要性: RAWで撮影したい場合は、別途Atomos Ninja V+などの外部レコーダーが必要となり、システムが大きくなり、コストも増加します。
- ワークフロー: 内部収録できるXAVC S-I 4:2:2 10bitも非常に高品質ですが、RAWほどの編集耐性はありません。最大限の画質と編集自由度を求める場合は、外部レコーダー運用を前提とする必要があります。
「液晶モニターの解像度」は十分か?
FX2の液晶モニターは、バリアングル式の3.0型ですが、解像度は約104万ドットです。これは、最新のカメラとしては、やや物足りないスペックと言えるかもしれません。
- ピント確認: 特に高解像度センサーを搭載しているだけに、厳密なマニュアルフォーカス時のピント確認が難しい場面があるかもしれません。ピーキング機能や拡大表示機能を活用する必要があります。
- 屋外での視認性: EVFがあるとはいえ、メニュー操作や再生確認などで液晶モニターを使う場面は多くあります。高解像度モニターに慣れているユーザーは、少し物足りなさを感じる可能性があります。
「EVFの干渉問題」の可能性
チルト式EVFは非常に魅力的ですが、その構造上、トップハンドルや外部モニター、マイクなどを装着した場合に、チルト動作と干渉する可能性が指摘されています。
- リギングの工夫: 特に、XLRハンドルユニットを装着した場合や、ホットシューに機材を取り付けた場合に、EVFの可動域が制限される可能性があります。使用したいアクセサリーとの組み合わせを事前に確認し、リギングを工夫する必要があるかもしれません。
FX2はどのようなユーザーにおすすめか
メリットとデメリットを踏まえ、FX2はどのようなユーザーにとって最適な選択となるのでしょうか。いくつかのユーザータイプを想定してみましょう。
インディペンデントフィルムメーカー / 小規模プロダクション
限られた予算の中で、シネマティックなルックと高い機動性を求めるチームに最適です。EVFによる撮影のしやすさ、AI AFによる省力化、S-CinetoneやS-Log3による画質、そしてFX3よりも手頃な価格は大きな魅力です。4K60pのクロップは懸念点ですが、工夫次第で対応可能でしょう。
ビデオグラファー / イベントシューター
ウェディング、企業イベント、ドキュメンタリーなど、長時間にわたる撮影や撮り直しがきかないシーンで、FX2の冷却ファンによる長時間撮影性能と、AI AFによる確実なピント追従は絶大な信頼性をもたらします。EVFは屋外イベントでの撮影を強力にサポートします。
ハイブリッドシューター
高品質な動画と静止画の両方を1台で、かつ高いレベルで実現したいユーザーにとって、FX2は理想的な選択肢の一つです。3300万画素センサーは静止画に十分なクオリティを提供し、Cinema Lineの機能は本格的な動画制作を可能にします。クライアントへの納品物として、動画と静止画の両方が求められる場合に威力を発揮します。
YouTuber / コンテンツクリエイター
AIオートフレーミングやリアルタイム認識AFは、ワンマンでの撮影が多いコンテンツクリエイターの負担を大幅に軽減します。EVFは屋外でのVlog撮影や、より凝った画作りをする際に役立ちます。S-Cinetoneを使えば、編集の手間をかけずに見栄えのする映像を制作できます。
FX3ユーザー / αユーザーのサブ機として
すでにFX3やαシリーズを使用しているユーザーが、EVF搭載機やAI機能搭載機を求めている場合、FX2は魅力的な選択肢です。既存のEマウントレンズ資産を活かせ、操作性にもすぐに慣れることができます。FX3とFX2を組み合わせることで、撮影シーンに応じた使い分けが可能になります。
Cinema Line入門者
これから本格的な映像制作を始めたいと考えているユーザーにとって、FX2はCinema Lineへの最適なエントリーポイントとなるでしょう。プロフェッショナルな機能と画質を、比較的手頃な価格で手に入れることができます。EVFやAI機能は、学習コストを下げ、クオリティの高い映像制作をサポートします。
まとめ – αの心臓とCinema Lineの魂、EVFという新たな翼
Sony FX2は、単なるFX3のEVF搭載版ではありません。それは、**α7 IVの高画素センサーとAIプロセッシングユニットという「αの心臓」と、Cinema Lineが培ってきた映像思想と信頼性という「Cinema Lineの魂」、そして多くのクリエイターが待ち望んだ「EVFという新たな翼」**を併せ持った、新世代のハイブリッドシネマカメラです。
もちろん、4K60pのクロップやローリングシャッターの懸念といったデメリットも存在します。しかし、それらを補って余りあるほどのメリットと、戦略的な価格設定は、多くの映像制作者にとって福音となるでしょう。
FX2の登場は、映像制作の現場に**「選択肢の多様性」**をもたらします。フルサイズ4K60pを求めるならFX3、さらに上位を目指すならFX6/FX9。そして、EVFによる撮影自由度とAIによる効率性、ハイブリッド性能を求めるならFX2。ソニーは、クリエイターの多様なニーズに応えるべく、Cinema Lineのポートフォリオを着実に強化しています。
FX2は、その名の通り「FXシリーズの第二章」を予感させるモデルかもしれません。EVFとAIを武器に、映像制作の新たなスタンダードを築く可能性を秘めたFX2。その実力が、実際の現場でどのように評価されるのか、今から目が離せません。この記事が、あなたのカメラ選びの一助となれば幸いです。